クマが教える英語のしくみ


9-2■ トレーニングは自分でするもの ■

「さて、『英語のしくみ』の勉強もこれでだいたい終わりだね」

「え?本当にもう終わりなの?じゃ、今日で森の英語教室はなくなっちゃうの?」

「うん。日常会話の文法内容はだいたいカバーしたから、これから先はケイコちゃんが自分でやるトレーニングだね。スキーの本をたくさん読んでもスキーはうまくならないのと一緒。実際に聞いたり、話したりしないとね」

「そうかー。でも、ネイティブの人と話せる機会ってそんなにないなー。学校に来るアメリカ人の先生は週に一回だけだし、私がその先生と一対一で会話の練習するのは毎回とは限らないし」

「じゃ、CDつきの本で勉強するとか、ラジオ講座を使うとか、洋画のビデオを繰り返し見るとかしてね」

「そうか。まず、聞いて理解することから始めるのね。聞いてわからない限りは会話にならないものね」

「そうだね。それで、ナチュラルスピードで録音されたCDなんかを使います。まず、何度か聞いてみて、わからなかったら、テキストを見てチェックね。英文を一度読んで理解できなかったら、英文にカッコとかSVなんかの記号をふって分析してみてね。記号をふるだけで、文のしくみが見えてくるよ。『短い表現なのに節が入っている』とか気がついたりしておもしろいかも。

それから日本語訳を見て、なんでこの訳になるんだろうかっていうのも考えてみてね。それで、英文のしくみと意味がわかったら、自分に英語を染みこませるようなつもりで、何度も何度も繰り返し聞いてね。文のリズムをつかむの」

「何回ぐらい聞けばいいの?」

「50回くらい」

「ええーっ!50回!?」

「そう、会話の場面をイメージしながら50回ぐらい聞くの。イメージが重要ね。CDプレーヤーにリピート機能とかついてるでしょ?50回聞いてリズムがなんとなくわかったら、今度はCDにあわせて50回読むの、同時にね」

「50回読む!!」

「そう。音読ね。そうすると英語の語順の回路が頭にできるようになるよ。それくらい読めば見なくてもいえるようになるかな。でも、それで終わっちゃったらダメなんだ。2週間後ぐらいに、日本語訳を見て英文がスラスラっと言えるかどうか、チェックするの」

「えー?2週間後にまたチェック?それで覚えてなかったら?」

「また50回読んでみて」

「ひゃー」

「繰り返しが重要なんだよ」

私はめまいがしてきました。

「本当にトレーニングね。スパルタ式。容赦ないって感じ」

「うん。外国語だからね。うまくなりたいなら、耳のトレーニング、口のトレーニングをしないとダメなの。脳にそういう回路を作らないと」

「...そうなのかー、わかった。必ずやるからね。トレーニング」

わたしはクマの授業が終わった達成感も手伝って、もうなんでもできそうな気がします。

「うん。がんばってね。ボクはこの森にいるから、わからなくなったらいつでも来てね」

「うん。あ。そうそう、渡したいものがあったんだ...」

お別れのプレゼントにとリボンをつけたハチミツの小ビンを持ってきていたのでした。 バックの中からプレゼントを取り出し、「ハイ」っとクマに手渡そうとしたところ、クマの姿はなくなっていました。

「あ。クマー!クマー!」

森の中で私の声がこだまするだけでした。